燐銅鉱

滋賀県湖南市灰山産
秋田県大仙市荒川鉱山産

 燐銅鉱【Cu2PO4(OH)】は銅の燐酸塩鉱物で、オリーブ銅鉱の「砒素」→「燐」置換体に相当する。国内では、初めて滋賀県灰山(高田、松原,1989)から、次いで秋田県荒川鉱山から報告された。(他に高知県で産出した話を聞いたことがある。)同じ銅の燐酸塩鉱物である擬孔雀石に比べ稀産で、産地の数が圧倒的に少ない。Martens and Frost (2003)によれば、燐銅鉱の方が擬孔雀石に比べ、燐酸イオン濃度が高い環境下で生成されることが示されており、国内においてそのような環境がより稀であると示唆される。

 燐銅鉱の自形結晶は、世界共通で三角形の結晶面が目立つ。直方晶系に属するため、もちろん正三角形ではないが、同定上の大きな手がかりとなる。写真で紹介している灰山産のように結晶面が現れないと、肉眼での同定はかなり難しい。また、灰山産の場合、内部に石墨粒子を内包しているケースもあり、かなり黒っぽく見えることがある。

 燐銅鉱には、銅の入るサイトが2つあり、うち1つを亜鉛が占めると、亜鉛燐銅鉱となる。国内では初めて灰山産のものが報告された。(石橋、下林, 2014)それによれば、小さな球果状をした標本で、亜鉛の影響により色調が燐銅鉱に比べ青っぽくなる。また公式な報告はないが、灰山付近の緑台地内からも見つかっている。

滋賀県湖南市灰山産

引用文献

石橋 隆, 下林 典正(2014) 滋賀県湖南市灰山産の亜鉛燐銅鉱(zincolibethenite)(演旨), 日本鉱物科学会年会講演要旨集, 59-59

Martens W., Frost R. L. (2003) An infrared spectroscopic study of the basic copper phosphate minerals: cornetite, libethenite, and pseudomalachite, American Mineralogist, 88, 37-46

高田 雅介, 松原 聡(1989) 滋賀県甲賀郡石部町灰山の日本新産燐酸塩鉱物--燐酸銅およびパラショルツ石について--, 地学研究, 38, 76-82